学校安全ネット通信第11号・巻頭号「家庭反省指導」
問題行動が改善されない広島市立工業高校の男子生徒(当時2年生)に対して、校長が「明日から学校に来させないでください」と発言(本件発言)したことの違法性が争われ、今年5月27日に広島地裁で判決が出され、広島市に賠償金20万円の支払いが命じられた。
広島市は、6月5日に広島高裁に控訴し、現在係争中である。
原告である元高校生は、2年生の6月頃から、遅刻が多い、授業態度が悪い、教師への暴言がある等の問題行動が重なり、以降、学校側は夏休み中も生徒指導を継続し、一旦改善されたと思われたが、再び問題行動が繰り返され、9月4日に校長から本件発言があり、原告は9月12日に学校に転学届を提出し、転学するに至った。
判決は、本件発言は、退学処分や無期限の停学処分の告知に当たるものではなく、その性質は学校の内規で定める「家庭反省指導」に止まると認定して、その違法性の判断枠組みを示した。
前提として、「家庭反省指導」は①校内学習の機会の喪失を伴い、教育を受ける機会を相当程度制限する、②事実上強制の停学措置や自主退学勧告に受け止められかねない性質を帯びるとした上で、①適正な手順・対応が求められる、②退学や停学処分と受け止められないように十分に配慮して行う必要があるとし、適正な手順・対応ないし配慮を著しく欠くような態様で「家庭反省指導」がなされた場合は、教育を受ける機会を不当に制限することになり、教育指導上の裁量権の範囲を逸脱ないし濫用するものとして国賠法上違法となる場合があるとした。
本件の当てはめとして、校長が本件発言に際して家庭内でどのような検討・反省をすれば授業復帰につながるか等といった点を具体的に説明していなかった、本件発言の後間もなく保護者が転学の手続きを取った際にも校長は転学に向けた準備を行っている等に照らすと、原告や保護者の主観において転学を検討せざるを得なくなり、校長においても原告らがそのような認識を持つことを十分念頭に置いて発言されたと認められるとした。
となると、本件発言は、生徒が家庭内で話し合い、生活を振り返る時間を設けるといった趣旨とは到底評価できず、事実上の無期停学状態にした上で自主退学を促すことに主眼があって、教育指導上の裁量権の範囲を逸脱ないし濫用するものとして国賠法上違法であるとした。
以上のように、判決は、本件発言を〈学校に来させないで家庭で指導してください〉との意味合いと捉えた。しかし、本件発言は〈本校に来させないで他校を考えてください〉とも取れる。後者では、自主退学勧告と解釈することになる。実際に保護者は後者として受け止め、転学手続きを進めた。
裁判所は、自主退学勧告との解釈を取って、その処分の違法性判断の枠組みを提示して判決することもあり得たかもしれない。
となると、処分の性質上、審査基準は厳格となる。本件判決については、「家庭反省指導」と認定して緩い審査基準で判断し、その基準であっても違法であることを明らかにしたという読み方ができる。
さらに、学校の生徒指導への取り組みとして、6月からの問題行動がおさまらず、指導を継続するとして、夏休みをはさんでの約3ヶ月が経過した段階では、やはり一度「家庭反省指導」を試みて、それでも改善が無い場合に、次の段階の自主退学勧告に進むというのが自然であるように思える。
その意味でも裁判所が本件発言を「家庭反省指導」と認定した合理性はあるかもしれない。
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